20210403 『IN COLOR IN JAPAN』

昨年、本当に待ちに待った写真集が発売された。
『In Color In Japan』
ストリートフォトグラファー、Shin Noguchiさんの作品集。

数年前にTumblrで偶然ある写真を見て「すごい人がいる!」と知り、それ以来いつか写真集が出れば絶対買おうと心に決めていた。

個々の写真については実際に見て欲しいから、基本的に触れないつもりなのでフワフワした文章になるけれど。ただ残念ながらソールドアウト。まあなんとか誰かに見せてもらって欲しい。

頻繁に読み返すために、まだ本棚に入ったことがない一冊。

こちらの感情の自由を奪うような共感の強要なんかじゃなく、フックだけを提供してくれるような写真。あとはどう感じるかは自由だよって。
過剰なドラマやエモさ、みたいなものを纏って暴力的な共感を押し付けてはこない。

見開きの写真の並びに、まるで韻を踏んでるみたいだなと思う。韻を踏むことで一つ前のフレーズにもう一つの意味を浮かび上がらせてダブルミーニングにするような左右の配置。
そして左右の配置だけではなく、まだその残響音が意識に響いてる中でページをめくると、まるでその残響音に音を重ねて和音を作るように次の写真が提示される。とても音楽的な仕掛けだな、と思う。

撮影だってそう。他の演奏者の意図を敏感に汲み取りながら見事なフレーズを放つミュージシャンのように、ストリートで目の前の出来事のキーやリズムを読み取って撮られている。即興演奏はスキルがモロに出る。
まあ、こじつけかもしれないし的外れな気もする。けど、ボクはさっき自由を与えてもらったからな。

そしてもしこの一冊を曲に例えたならちょうど最後のサビあたりで、ボクが知るきっかけとなった写真がきて嬉しくなる。

最後のページ。ほとんど奇跡のような百獣の王の写真の右にはShinさん本人が写っている写真。
直接やりとりをさせていただくようになる前、Tumblrで見かけた逞しく鍛えられた姿の写真を見て、怖そうな人だな、とずっと思っていたんだけど、その後、実際にメッセージなどをいただいたり、木村伊兵衛の写真集をいただいたり(すごいよねこれ)した中で、それがすっかり勘違いだったことを知った。

勝手な先入観で怖そうに感じていたけれど、本当はとても優しく愛に溢れる方だったなと、もう一度隣の“ライオン”の写真を見ながら思う。